クーリングタワー(冷却塔)の点検、法律で決まっているって知ってましたか?

「クーリングタワー(冷却塔)って、本当に点検しないといけないの?」という声は意外と多く聞かれます。しかし、冷却塔は建築物衛生法などで定期的な点検と清掃が法律で義務づけられている設備です。とくに多くの人が出入りする建物では、冷却塔の状態によって空気の清浄度や健康リスクにも関わるため、適切な管理が求められます。


見た目には変化がなくても、内部には水が常に循環しているため、汚れ・ぬめり・スライム(細菌のかたまり)などが発生しやすく、放置すれば衛生面のリスクが急速に高まります。また、レジオネラ属菌の発生源にもなり得ることから、法令によって点検・記録の実施が義務づけられています。


「止まっていないから大丈夫」では済まされないのが冷却塔の点検。使い続ける以上、定期的な管理と記録が必要であり、それは設備を守るだけでなく、利用者の安全にも直結しています。




点検義務があるのはどんな施設?該当する法律とは

冷却塔の法定点検は、主に**建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)**に基づいて定められています。これは、不特定多数の人が出入りする施設の空気や水の清浄度を確保するための法律で、冷却塔を含む設備の点検・清掃・記録を建物の管理者に義務づけています。


対象となるのは、たとえば延べ面積3,000平方メートル以上のオフィスビル、商業施設、病院、学校などです。これらの施設では、空調用冷却塔に加え、空気調和機、送風機、加湿器などの衛生設備すべてに対して、定期的な点検・整備が必要です。


点検は「定期(半年に1回)」および「特定建築物としての登録がある場合は年1回の建築物環境衛生管理技術者による記録」が求められます。これらの記録を怠った場合、指導や是正命令、最悪の場合は行政処分を受けることもあります。


また、冷却塔が設置されている場所が露出型である場合、鳥や虫、落ち葉などの侵入によって汚れやすく、衛生リスクも高まります。こうした構造的な問題にも注意しながら、定期的な点検と合わせて、槽内の清掃や循環水の水質管理も欠かせません。


設備を守るだけでなく、法律に基づいて正しく管理することが、建物全体の安全性と信頼を支える土台になります。




点検項目の詳細――水質・機器・清掃

冷却塔の点検では、大きく分けて3つの項目を確認します。ひとつは循環水の水質、次に装置本体の機械的な状態、そして槽内や充填材などの清掃状態です。いずれも連携しており、どれかひとつでも不備があると設備全体の性能や衛生面に影響を及ぼします。


水質管理では、pH・濁度・遊離残留塩素濃度などの数値を測定します。これらの値が基準値から外れていると、スライムや藻類、レジオネラ属菌の繁殖につながるため、適切な水処理剤の投入や、補給水・排水の調整が必要になります。


機器本体の点検では、ファンやモーター、ベルトの張り、軸受の異音、振動の有無などを確認します。これらが劣化していれば風量が不足し、冷却能力が落ちるだけでなく、電気の消費量も増えるため、早めの部品交換や調整が重要です。


最後に、槽内の清掃です。とくに充填材と呼ばれる部材の隙間には、汚れやスライムがたまりやすく、においや細菌の温床になりやすい場所でもあります。槽底に堆積物が見られる場合は、すみやかに洗浄を行う必要があります。加えて、フィルターやドレンの詰まり、オーバーフロー配管の確認などもセットで行います。


点検は「壊れたら対応」ではなく、「壊れる前に整える」ための重要な手段です。項目ごとの状態を記録に残すことで、次回の整備時期や異常の傾向も把握しやすくなります。




清掃とメンテナンスの方法――効率と衛生の両立を図るには

冷却塔の清掃とメンテナンスは、単に汚れを落とすだけではありません。水質や衛生状態を保ちつつ、機器本来の性能を引き出すために行う「機能回復の作業」です。とくに、汚れやすい充填材(ちゅうてんざい)や槽内の洗浄は、冷却能力と衛生状態の両方に大きく関わるため、定期的に実施する必要があります。


充填材は、上から流れる水が空気と触れて熱を放出する構造になっていますが、ここにスライムや藻が付着すると、水が均一に流れなくなり、冷却効率が一気に下がります。これを放置すれば、レジオネラ属菌の発生リスクも高まり、施設全体の安全を脅かすことにもなりかねません。


洗浄作業では、まず循環水を排水したうえで、充填材や槽内を手作業または高圧洗浄機で洗います。スライムや水垢が固着している場合は、専用の洗剤を用いた薬品洗浄も検討されます。また、ファンの羽根やケーシングまわりも意外と汚れているため、見落とさず清掃することが大切です。


さらに、水の補給口・排水口まわりに堆積物がたまっていると、水の流れが悪くなり、運転に支障をきたします。補給水のストレーナーや、オーバーフロー配管なども忘れずに確認しておくべきポイントです。


清掃と合わせて、ベルトの張り具合、モーターの発熱、ファンの振れといった機械的な点検も行えば、故障の予防にもつながります。単なる清掃で終わらせず、「機能を回復させる作業」としての視点を持つことで、設備の性能維持と衛生の両立が可能になります。




点検・メンテナンスの頻度と記録管理の重要性

冷却塔の管理は、「やったかどうか」ではなく、「どのように管理したか」が問われる時代になっています。とくに法定点検の対象となっている施設では、点検と清掃を行った記録を残すことが義務づけられています。記録は帳票や報告書として保管し、行政からの立ち入り検査などがあった際に提示できるようにしておく必要があります。


点検の頻度は、基本的に年2回以上の実施が推奨されています。建物の規模や使用状況によっては、3か月に1回の水質検査や、毎月の簡易チェックを取り入れている施設もあります。とくに夏季など使用頻度が高くなる時期の前後には、重点的な確認が欠かせません。


清掃については、年1回以上の槽内・充填材洗浄が推奨されます。汚れがひどい場合や、過去にレジオネラ属菌の検出履歴がある施設では、半年ごとの洗浄が望ましいとされています。こうした整備内容は「記録」として残すことで、次回以降の計画にも役立ちます。


また、設備の状態を時系列で見られるようにしておくことで、「劣化の傾向」や「交換の必要性」にも気づきやすくなります。ベルトや軸受などの部品が何年目で異常が出たか、水質の変動がいつから起きているか――これらを追えるかどうかで、次の判断の正確さが変わります。


メンテナンスの質は、実施そのものだけでなく、その記録管理と継続性によって保たれるものです。日々の点検・清掃と、それを支える記録の積み重ねが、冷却塔の安全運転を支える土台になります。




法定点検と清掃を確実に進めるために

冷却塔は、ただ運転できていれば良いというものではありません。法律に基づいた点検と、実効性のある清掃を確実に行うことが、設備の性能を守り、衛生リスクを防ぐために欠かせません。


当社では、点検から清掃、記録作成まで一括して対応しております。「そろそろ清掃が必要かも」「水質が気になる」といったお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。