ファンコイルユニットが効かない…?仕組みと点検の基本

冷暖房の効きが悪くなった、風が出ていない気がする、部屋ごとに温度のムラがある――こうした相談の多くで関係しているのがファンコイルユニットの不調です。オフィスビルやホテル、病院など、部屋ごとの空調を支えるこの装置は、内部の汚れや部品の劣化が進むと、徐々に本来の性能を発揮できなくなります。


室内に設置されているため「まだ動いているし問題ない」と見過ごされやすい設備ですが、冷温水が通る配管や内部ファンは、年数とともに確実に負荷がかかっています。不調のサインは、急な故障ではなく、日々の中で少しずつ現れてくるものです。だからこそ、「なんとなく調子が悪い」と感じた時点で、点検の準備を始めることが大切です。




ファンコイルユニットはどう動いているのか

ファンコイルユニットは、冷温水を利用して空気を冷やしたり暖めたりする装置です。天井や壁に設置されており、熱交換器(コイル)に冷温水を流し、そこに室内の空気を通すことで温度を調整し、再び室内に戻しています。空気を動かすためのファンと、温度調整を担うコイルという2つの機能をあわせ持つのが特徴です。


この仕組みは、エアコンのように冷媒ガスを使うのではなく、建物全体の冷温水配管を通じて冷暖房を行います。そのため、冷温水の温度が適切に保たれていても、ファンやフィルター、コイルに汚れがたまっていたり、モーターに不具合があると、思うように空気が出ず、部屋が冷えない・暖まらないといった問題が生じます。


また、ファンコイルユニットは建物ごとに設置場所や機種が異なり、部屋の使用状況によって負荷のかかり方も変わります。たとえば湿気の多い部屋では結露が出やすく、コイルやドレンまわりにカビが発生しやすくなります。逆に乾燥しやすい空間ではフィルターの詰まりが早く、風量が極端に落ちることもあります。


このように、同じ設備でも設置場所や使用環境によって劣化の仕方が異なるため、定期点検を通じて「今どこに不調が出始めているのか」を知ることが、早めの対応につながります。




点検のときに見るべき5つのチェックポイント

ファンコイルユニットの点検では、まず最初に「風が出ているか」「音が異常に大きくないか」を確認します。風量が明らかに弱い、音が大きくなったという場合、ファンモーターの不具合や内部の汚れが進んでいる可能性があります。


次に見るべきはフィルターの状態です。ほこりやちりがたまると、空気の流れが妨げられ、風が出にくくなるだけでなく、モーターや熱交換器にも負荷がかかります。目詰まりしている場合は、早めの清掃または交換が必要です。


熱交換器(コイル)に汚れやスケールがたまっていないかも重要な確認ポイントです。ここが詰まっていると、熱の伝わりが悪くなり、冷暖房の効きに大きな影響が出ます。見た目だけではわからないため、定期的に表面を分解・洗浄する必要があります。


さらに、ドレンパンと排水ラインのチェックも欠かせません。結露によってたまった水がきちんと排出されず、あふれたり逆流したりすると、カビやにおいの原因になります。ドレン部分にぬめりや水のたまりが見られる場合は、清掃が必要です。


最後に、異音や異常振動の有無を点検します。ファンブレードの破損やモーターの軸ずれがあると、通常とは異なる音や振動が出るようになります。わずかな違和感でも、放置すれば大きな故障につながるため、早めに専門業者に診てもらうのが安心です。




汚れ・劣化による性能低下とその対策

ファンコイルユニットの不調は、突発的に起きるわけではなく、内部の汚れや部品の劣化がゆっくりと進むことで、徐々に性能が低下していくのが一般的です。最初は「風が弱いかな?」と感じる程度でも、それが続けば室内温度が安定せず、快適性も損なわれます。こうした性能の低下は、利用者にとっては「なんとなく居心地が悪い」空間につながります。


汚れの中でも特に影響が大きいのが、熱交換器とフィルターです。熱交換器のフィンに細かいちりや油分が付着すると、冷温水との熱のやりとりがうまくできなくなり、空気の温度が適切に調整されなくなります。これによって、設定温度まで達するのに時間がかかり、結果的にエネルギーの無駄にもつながります。


フィルターが目詰まりを起こしていると、風そのものが通りにくくなり、せっかく熱交換器が正常でも空気がうまく循環しません。これによりモーターに余計な負荷がかかり、最終的にはファンの回転不良やモーター焼損など、大きな故障へ発展することもあります。


また、長年使われたユニットでは、モーターの軸受やファンブレードのバランスが崩れて、異音や振動が生じやすくなります。これらは使用環境によって進み方に差があるため、使用年数だけで判断せず、実際の状態を見て整備の必要性を判断することが重要です。


対策としては、汚れがたまりやすい部分の定期的な清掃と、部品の計画的な交換が基本です。見た目に異常がなくても、運転音が以前と違う、風が弱い、においが気になる――そうした変化があれば、まずはユニット内部の確認を行うのがよいタイミングです。




定期点検の頻度と、やっておくべき整備内容

ファンコイルユニットの安定稼働を維持するには、年に1回の点検がひとつの目安です。とくに使用頻度の高い施設や、長時間運転される現場では、年2回の点検を行うことで、不具合の早期発見につながります。清掃や簡単な部品交換で済むうちに対応することで、大がかりな修理を防げる可能性が高まります。


点検内容としてまず行うべきは、フィルターの取り外し・洗浄です。ユニットによっては工具なしで外せるものも多く、建物側で対応可能な場合もあります。清掃の際は、目詰まりがないか、破れやゆがみがないかも一緒に確認しておきましょう。


つぎに、熱交換器の表面洗浄が挙げられます。洗浄専用の薬品を使って表面の汚れを落とすことで、冷暖房効率は少なからず改善します。ただし、重度の詰まりや水垢がある場合は、薬品洗浄や分解洗浄が必要となるため、業者に依頼するのが安全です。


さらに、ドレンパンと配管の点検・清掃も重要です。カビやぬめりがあると、においの原因になるほか、排水が詰まって水漏れが発生する可能性もあります。目視での確認と、必要に応じた洗浄などを取り入れることで、衛生面のリスクも減らせます。


また、冷温水配管部分ににじみや錆が発生していないかの確認ができる場合は確認しておきましょう、流量を調整する電動弁が異常に加熱していないかなどの簡易的な確認も必要です。


最後に、ファンモーターや軸受けの状態、ファンの回転バランスなどを点検します。異音や振動がある場合は、部品の摩耗が進んでいる可能性があるため、専門の業者による確認が必要です。小さな異常も放置せず、状態に応じた整備を進めることが、長期的な設備維持につながります。




こんな症状があれば業者に相談を

風の出が弱くなった、以前より音が大きくなった、水が床にたまっていた――そんな症状がひとつでもあれば、ファンコイルユニットの不調が疑われます。使えているからと安心せず、早めの点検で大きなトラブルを未然に防ぐことが大切です。


当社では、各種ユニットの診断から洗浄、部品交換まで一貫して対応しています。不具合の原因がわからない場合でも、状態確認のみのご依頼も可能です。気になる症状があれば、まずはお気軽にご相談ください。


担当者:石橋(イシバシ)

問い合わせ先:029-896-3238