エアハンドリングユニットの仕組みと点検・洗浄で見逃せないポイント

暑い時期に「冷房の効きが悪い」と感じる、送風量が弱くなってきた気がする――そんな時、エアハンドリングユニット(AHU)の内部で何かしらの不調が起きているかもしれません。目に見えない空気の流れをつかさどる機器だからこそ、不具合に気づきにくく、対応が遅れがちです。


エアハンドリングユニットは、ビルや施設全体の空気をまとめて処理する設備であり、いわば「空気のエンジン」のような役割を担っています。もしここに汚れや詰まりがあれば、全体の空調効率が落ちて、各部屋の快適性に直接影響を及ぼします。


「部屋の問題だと思っていたら、実は機械室に原因があった」というケースも少なくありません。異常が出る前に、定期的な点検と清掃を行うことが、快適な空気環境を守る第一歩です。




エアハンドリングユニットとは?床置型空調機との違い

エアハンドリングユニット(AHU)は、外気の取り込み、加熱・冷却、加湿、送風といった空気の調整を一括で行う大型の空調装置です。ビルや病院、工場などの広い空間で使われており、空調機械室に設置されていてダクトを通じて各部屋に処理済みの空気を送ります。


一般的な床置型空調機との違いは、使う熱源です。床置型空調機は冷媒ガスを使用するものが多いのに対し、エアハンドリングユニットは冷温水を使って空気を冷やしたり暖めたりします。この冷温水は、ボイラーや冷凍機などの中央熱源設備によってつくられ、AHU内部の熱交換器で空気と熱のやりとりを行います。


このため、空調の性能はエアハンドリングユニットだけでなく、冷温水を供給する配管の状態や熱源機器の整備状況にも影響されます。どこか一箇所でも詰まりや汚れがあれば、全体の空調能力が落ち、室内環境が不安定になる恐れがあります。


また、エアハンドリングユニットはその構造上、複数の機能がひとつにまとまっているため、点検や整備が後回しになりがちです。しかし、内部には熱交換器・加湿器・ファン・フィルターなど汚れやすい部品が多く、一定の運転時間を経過すれば、確実に性能の低下が始まります。だからこそ、日々の変化に敏感になり、早めの点検を行うことが重要です。




点検時に注意すべき項目と故障リスク

エアハンドリングユニットの点検では、まずフィルターの状態を確認します。外気を直接取り込む設備のため、ちりやほこり、排気成分などがたまりやすく、目詰まりを起こせば風量が低下し、熱交換効率にも悪影響が出ます。フィルターの洗浄または交換は、最も基本的かつ重要な保守作業のひとつです。


次に重要なのが熱交換器の汚れと冷温水配管の通水状況です。熱交換器のフィンに汚れがたまると、空気との熱のやりとりが不十分になり、設定温度に届かなくなります。また、配管内にスケールや空気がたまると、水の流れが悪くなり、冷暖房能力が極端に落ちる原因になります。


さらに見落とされがちなのが加湿器やドレン系統の確認です。加湿器は水を使うため、ぬめりやカビが発生しやすく、清掃を怠れば空気のにおいや衛生面の問題にもつながります。ドレンパンに水がたまっている、排水口が詰まっているなどの不具合があれば、早急な対応が必要です。


そして、送風ファンやモーターの状態も忘れてはいけません。異音や振動がある場合、軸受けの劣化やバランスの崩れが疑われます。これらは故障の前兆として現れるため、軽視せずに原因を突き止め、必要に応じて部品の交換や調整を行うことが大切です。




冷温水配管洗浄の重要性と見落としやすい汚れ

エアハンドリングユニットの性能を維持するうえで、見逃せないのが冷温水配管の内部汚れです。ユニット本体の点検やフィルターの清掃だけでは不十分で、水を循環させる配管内の状態にも目を向ける必要があります。なぜなら、配管内にスケールやサビがたまっていると、どれだけ機器が正常でも水の流れが悪くなり、結果的に空気の温度調整がうまくいかなくなるからです。


スケールとは、水の中に含まれるミネラル分が固まったもので、時間の経過とともに配管の内側にこびりついていきます。これにより配管が細くなり、流量が落ちることで、熱交換器に十分な冷温水が届かなくなります。とくに冷房時には「冷えが弱い」「設定温度にならない」といった現象として現れやすくなります。


また、配管内に空気が混入していると、水の流れが途切れがちになり、空気溜まりができて水が循環しなくなることもあります。このような状態が続けば、熱交換器の一部だけしか機能しない“偏った運転”が起き、全体の能力が大きく低下します。


定期的な洗浄作業では、専用の洗浄剤を使って配管内部のスケールやサビを取り除きます。施設の規模や使用水の水質によって洗浄の頻度は異なりますが、3-5年に1回程度の目安で配管洗浄を計画することで、トラブルの予防につながります。


目に見えない配管の中だからこそ、「まだ大丈夫だろう」で済ませるのではなく、あらかじめ状態をチェックし、必要に応じた対応を進めておくことが、設備全体の健全な運転を保つカギになります。




点検と洗浄でどれだけ違う?運転効率と快適性の回復

エアハンドリングユニットは、点検や洗浄を行うことで目に見える改善効果が得られやすい設備です。「なんとなく冷えない」「空調にムラがある」といった症状が出ていた場合でも、熱交換器や配管をきれいにすることで、空気の流れや温度調整が大きく改善されます。


とくに効果が表れやすいのが、送風量と温度変化の安定性です。フィルターやファンの清掃によって風量が回復し、部屋の隅々まで空気が行き届くようになります。さらに、冷温水がしっかり流れるようになることで、各部屋の設定温度への到達時間が短くなり、空調効率も上がります。


加えて、汚れが原因だったにおいの改善や、ドレン系統のつまりによる結露水漏れの防止など、衛生面の効果も見逃せません。加湿器部分の清掃によって、空気の清浄度も高まり、利用者の快適性が向上します。


こうした改善は、日常的に使用している人にとっては非常にわかりやすく、「空調が効くようになった」「音が静かになった」といった声に直結します。また、エネルギー消費が抑えられることで、電気代の削減にもつながるため、運用コストの見直しにも効果的です。


点検と洗浄は、単なる“設備管理の義務”ではなく、空間全体の質を保ち、施設利用者の満足度を高めるための手段です。手をかけた分だけ成果が見える設備だからこそ、定期的な対応を習慣づけることが重要です。




点検・洗浄で設備の寿命を延ばすために

エアハンドリングユニットの不調は、小さな違和感から始まります。「風が弱い」「音が気になる」「冷えが遅い」――そんな症状を感じたときこそ、整備のタイミングです。見た目では問題がなくても、内部では汚れや詰まりが進んでいることも少なくありません。


当社では、フィルターや熱交換器の洗浄、送風ファンの点検、冷温水配管の洗浄まで一括して対応しています。設備の状態に合わせたご提案も行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。