水循環ポンプの不調、放置していませんか?軸受・軸封の整備ポイント

設備の奥で静かに動いている水循環ポンプは、普段あまり意識されることがありません。けれども、急に「キュルキュル」と音がする、水がにじんでいるように見える、以前より熱くなっている——そんな変化に気づいたとき、それはポンプ内部で何かが起きている合図かもしれません。


水循環ポンプは、冷温水やプロセス用水を循環させる役割を持つ重要な機器です。不具合が出れば、空調設備全体や生産ラインの停止につながる可能性もあります。しかし、表面上は動いているように見えることが多いため、点検や整備が後回しになってしまいがちです。


わずかな異常も、そのまま放置すれば重大な故障に発展します。だからこそ、小さなサインを見逃さず、早めの点検と整備を行うことが、設備を長持ちさせる最善策です。




水循環ポンプの基本構造と仕組み

水循環ポンプは、電動機と羽根車(インペラ)、軸、軸受、軸封といった複数の部品から成り立っています。モーターが回転することで、軸が羽根車を回し、水を圧送する仕組みです。羽根車の回転によって発生する遠心力で、水を一定方向に押し出し、配管内を循環させます。


この動作を安定して行うには、回転を支える「軸受」と、水が漏れないようにする「軸封」が正常に機能していることが前提です。軸受は金属同士の摩擦を抑え、滑らかな回転を保つ役割を担っています。一方、軸封は回転する軸と固定されたポンプ本体との隙間から、水や異物が漏れたり入り込んだりしないように防いでいます。(グランドパッキンは例外です)


これらはどちらも経年で劣化していきます。軸受がすり減れば回転が不安定になり、異音や振動の原因になります。軸封が劣化すれば、水漏れを起こし、周囲の機器やモーターに悪影響を及ぼすこともあります。


一見単純に見えるポンプの構造ですが、その安定運転を支えているのは、こうした細かな部品の精度と保全状態にかかっています。




故障の前兆になりやすい“軸受”と“軸封”の役割

ポンプの不調が現れるとき、最初に異変が起こるのが「軸受」と「軸封」です。これらは消耗部品であり、摩耗や劣化が避けられないため、定期的な交換が必要となります。


軸受が傷んでくると、まず現れるのは小さな「唸るような音」や「振動」です。軸が安定して回らなくなることで、回転にムラが出てポンプ全体が揺れ始めます。最初は気づかないほどの違和感でも、次第に音が大きくなり、ポンプの寿命を大きく縮めていきます。


軸封の劣化は、ポンプの外側に水滴やにじみが出ることで判断できます。常に水圧がかかっている部分だけに、わずかな劣化でも漏れに直結します。漏れた水は他の部品を腐食させたり、さまざまな二次被害を引き起こします。グランドパッキンにおいても適切に漏れ量を調整しないと同様な二次災害に貼ってする危険性があります。


定期的に回転部の音や熱を確認し、軸封まわりに水の跡がないかをチェックすることで、早期発見につながります。劣化が進んでからでは交換費用も作業時間も大きくなってしまうため、「少し変だな」と感じたらその段階で手を打つことが、結果的にはコストもトラブルも抑える一番の近道です。




軸受・軸封の劣化サインと整備のタイミング

軸受や軸封は、ポンプの回転や水密性を支える要となる部品ですが、劣化が進んでも目に見えにくいため、判断が難しい部分でもあります。だからこそ、音・振動・にじみといった**“変化”に気づけるかどうか**が、整備のタイミングを決めるうえで非常に重要です。


軸受が劣化すると、運転音が「ゴロゴロ」「うなるような音」に変わることがあります。これが続くと、やがて回転軸にブレが生じ、羽根車やケーシングとの接触を引き起こすおそれもあります。振動が手に伝わるほどになった時点では、軸受はほぼ限界を迎えており、早急な交換が必要です。


軸封については、運転中のにじみだけでなく、停止後に床へ水が垂れているかどうかも確認の目安になります。パッキンが硬くなっていたり、シール面が摩耗していたりすると、水が少しずつ漏れ出します。ここで「タオルで拭けば済む」と対応を後回しにしてしまうと、モーターの腐食や配線トラブルを招きかねません。


整備の基本は、「異常が出たから修理する」ではなく、「異常が出る前に交換する」ことです。使用開始から3~5年が経過している場合は、たとえ異常が見られなくても、定期点検の際に軸受と軸封の状態を詳しく見てもらうのが安心です。予防的な整備は、突発的な停止を防ぐとともに、トータルの維持コストを抑える確実な方法です。




点検を怠ると発生しやすいトラブルとその対処

水循環ポンプの点検を怠ることで発生するトラブルの多くは、日常の業務に大きな支障をきたすものばかりです。とくに多いのが、ポンプ停止による設備全体の冷温水循環の停止。これが起きると、空調が効かなくなり、機器類に熱がこもる、作業環境が悪化する、といった問題が発生します。


軸受の破損が進行すると、羽根車の回転が不安定になり、内部で異音や摩擦が起きるだけでなく、場合によっては羽根車の欠けやシャフトの破損につながることもあります。これによりポンプ本体ごとの交換が必要になれば、数日間のダウンタイムを伴う大がかりな工事になるケースも珍しくありません。


軸封の水漏れも、じわじわと他の設備をむしばみます。漏れた水がモーターに回り込めば、絶縁の低下からショートや漏電を引き起こすリスクがあります。また、配管まわりに水がたまり続けることで腐食が進み、他設備との接続部の交換を余儀なくされる場合もあります。


これらのトラブルは、いずれも「もっと早く点検していれば防げた」ものばかりです。早期発見と早期対応は、設備の長寿命化と安全稼働のための基本。点検や整備は、トラブルを未然に防ぐ“投資”と考えることが大切です。




定期点検で防げるコストと、整備の進め方

ポンプの不調は、早めに手を打てば小さな整備で済みます。異音が出始めた時点で軸受を交換すれば、数万円~程度の対応で済むことが多いです。しかし、これを見逃し続けた結果、ポンプが停止してしまえば、機器交換に加えて作業停止による損失が発生し、費用は何倍にも膨れ上がります。


だからこそ、設備を止めないための“先手”が重要です。もし、最近音が変わった気がする、周囲に水がにじんでいる、いつ点検したか覚えていない――そんな状態なら、まずは確かな技術を要する専門業者による状態確認をおすすめします。


当社では、ポンプの状態診断から整備、必要な部品交換まで一括で対応しています。ご要望に応じて、整備計画のご相談や点検記録の管理支援も行っております。些細な変化でもかまいません。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。