音が大きくなった、風が出にくくなった、以前より電気代がかかっている気がする――こうした変化が出ている場合、給排気ファンが劣化している可能性があります。送風や排気に関わるファンは、建物の中の空気を動かすために欠かせない設備ですが、動き続けるぶん、摩耗や汚れが進みやすくなります。
とくに異音や振動は、内部のバランスが崩れたり、軸受けに負担がかかっていたりするサインです。そのまま放置すれば、回転部分が焼きついたり、モーターに無理な力がかかって停止してしまうこともあります。
「古いけど、まだ動いているから大丈夫」と油断しているうちに、予想外の修理が必要になるケースは少なくありません。だからこそ、小さな異変に気づいた段階で点検を行うことが、設備を長持ちさせる第一歩です。
給排気ファンの耐用年数はどのくらい?目安と判断材料
給排気ファンは、常時回転し続けることを前提に設計されていますが、それでも永遠に使えるわけではありません。多くの機種で、使用環境や運転状況にもよりますが、耐用年数の目安は7〜10年程度とされています。これは、軸受けの摩耗や、モーター内部の絶縁材の劣化、バランスの崩れといった、経年による性能低下が進行してくる期間です。
ただし、耐用年数は“壊れる時期”ではなく、“性能が落ち始める時期”という認識が大切です。風量が安定しない、運転音が変わってきた、フィルターやダクトを掃除しても改善しない。こうした症状が出てきたら、たとえ運転できていても、交換や整備を考えるタイミングです。
また、使用頻度が高い現場や、湿気や粉じんが多い環境では、劣化の進みも早くなります。とくに工場や厨房、駐車場などでは、5年ほどで不具合が出はじめることもあります。使用年数だけでなく、設置環境の負荷にも目を向ける必要があります。
点検記録が残っていない場合は、製造年や設置年から逆算して現在の状態を見直すことも重要です。ファンの外観や音、振動に変化が見られたら、それは“そろそろ交換時期”のサインかもしれません。
点検で必ず見るべきチェックポイント
給排気ファンの点検では、見た目だけではわからない異常が多く潜んでいます。表面を清掃しただけで安心せず、内部の動作や構成部品の状態まで踏み込んで確認することが大切です。
まず注目すべきは軸受(じくうけ)部分の状態です。ここはファンの回転を支える重要な部品で、摩耗やグリス切れがあると異音や振動の原因になります。異音がすでに出ている場合、軸受の交換が必要になることもあります。
*下の写真は劣化したグリスとの比較になります。
次にファンブレードの汚れやバランスの崩れです。羽根に汚れがたまると重さが不均一になり、回転がブレて軸に負担がかかります。清掃だけでなく、羽根の取り付けや変形の有無も確認します。
さらに、モーター本体の発熱や焦げ臭さにも注意が必要です。これは内部の劣化や過負荷のサインで、放置すれば故障のリスクが高まります。異常がないように見えても、運転中に手を近づけて温度やにおいの違和感がないかを確認します。
点検は、設備の寿命を延ばすだけでなく、重大な故障の予防にもつながります。目に見えない“兆し”をどれだけ拾えるかが、整備の質を左右します。
放っておくとどうなる?劣化によるリスクとは
給排気ファンの劣化は、静かに進行します。最初は「音が大きくなったかな」「風が弱いかも」と感じる程度でも、放置することで取り返しのつかない事態に発展することがあります。とくに注意すべきなのは、モーターの焼き付きとシャフトの折損です。
軸受けが摩耗した状態で回転を続けると、内部で金属同士が擦れ合い、摩擦熱が発生します。その結果、モーターが過熱し、絶縁が破れて焼き付きを起こすことがあります。こうなるとファン全体の交換が必要になり、費用も工期も大きくかかります。
また、ファンのブレが続くと、回転の中心を支えるシャフトに無理な力が加わります。わずかな偏心でも長期間続けば、軸受が損傷を受け、最悪の場合は運転中に軸受が破損するおそれもあります。このようなケースでは、運転中に突然ファンが止まるばかりか、異音や煙を伴って周囲の機器にも影響が及ぶことがあります。
ファンのトラブルは、単体の故障にとどまりません。十分な給気・排気が行えなくなることで、部屋の温度や湿度が不安定になり、空調機本体や制御機器にも負担がかかります。加えて、厨房や工場のような現場では、作業環境の悪化や安全性の低下につながりかねません。
「まだ動いているから大丈夫」と思っていても、実際にはすでに劣化が進み、いつ止まってもおかしくない状態であることも少なくありません。だからこそ、定期的な点検と整備を通じて、早めにリスクを把握し、最小限の対応で済ませることが設備全体を守るうえで重要になります。
計画的な更新・整備のタイミングと優先順位
給排気ファンは、耐用年数だけで判断するのではなく、状態を見て計画的に更新・整備することが重要です。定期的な点検を通じて現状を把握し、必要なタイミングで整備・交換を行うことで、設備のトラブルを未然に防ぎます。
目安として、7年を超えた設備で異音や振動が見られる場合は、部品の交換や本体の更新を視野に入れるべき時期です。軸受けやベルトなどの消耗部品は、運転時間にも左右されますが、3~5年程度をめどに交換計画を立てておくと安心です。
また、すべてを一度に対応する必要はありません。ファンが複数ある場合や規模が大きい施設では、優先順位を決めて分割整備を行う方法もあります。異常が出ている箇所から着手し、正常に稼働しているものは次回の点検で再評価する、という形で無理のないスケジュールが組めます。
特に予算や業務への影響を気にされる場合は、予防保全と事後対応のコスト差を見える化することが判断材料になります。定期整備で済ませられるうちは数万円で抑えられていたものが、故障時の対応になると数十万円〜百万円規模の入れ替えになることもあります。
更新や整備は、突発的に行うものではなく、「そろそろかもしれない」と思ったタイミングで前倒しで検討するのが理想です。そのためにも、日々の点検記録や異常の有無をきちんと蓄積し、状態に応じた判断ができるようにしておくことが大切です。
専門業者に頼む前に、まず押さえておきたいこと
給排気ファンの点検や整備は、自分でできる範囲もありますが、内部まで正確に診断し、必要な処置を判断するにはやはり専門の技術が必要です。特に軸受やモーターの状態確認、振動の測定などは、経験と専用の測定器がなければ見逃してしまうこともあります。
ファンの音が以前と違う、振動が気になる、しばらく整備していない――そんな状態が続いているなら、まずは一度専門業者に見てもらうことをおすすめします。まだ大きな不具合が出ていない段階なら、簡単な調整や部品交換で済むことも少なくありません。
私たちは、設備の状態に合わせて点検から整備、交換までを自社で一括対応しています。現場の状況や予算に応じて無理のない提案を行っていますので、「少しでも気になる」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。